IT企業で働くバイリンガルママの育児日記

The Design of Everyday Things 「記事 :好きな色 アメリカ人 vs 日本人」続編(長文)

ymaruiwaの投稿 (2004年12月31日)

元の記事からの引用

好きな色 アメリカ人 vs 日本人

10月に日本人が好き色(白、青、赤、緑)の話が出た際に会社のユーザビリティの専門家に、お勧めの本のリストをもらい、そのうちの一冊 "The Design of Everyday Things" (by Donald Norman(邦題 誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 ドナルド・ノーマン著)を読んだ。認知心理学の人が書いただけあって、非常にわかりやすく、読みやすい本だった。また、事例が、ドアや電話と言った日常的な道具(まさに Everyday Things) から飛行機や原子炉の操縦と言った複雑なシステムと、多岐にわたり、興味深く読めた。

特に大韓航空の話は印象的だった。(当時の)ソビエト領域を飛んでしまったのは、空路のプログラミングミスだったのだが、飛行中で空路のプログラムは変更できず、変更するには一度空港に戻らないといけないシステム設計だったそうだ。空港に戻るということは、フライト時間の変更による客への迷惑や重複した移動のためのコストなど会社としては大きなロスになるが、過去半年すでに3度も空港に戻る騒動を起こしていることから、大韓航空はこの次戻ってくるパイロットにはペナルティなどと言っていたそうだ。そんなプレッシャーの中、パイロットは空港に戻ってプログラムを変更することができずに、そのまま飛び、最悪の結果を招いた。このエピソードにはそもそものデザインの劣悪さ(飛行中にプログラム変更ができない)もさることながら、間違いを正す行為(空港に戻る)を罰するのがどんなにまずいかを物語っている。工業デザインだけに関わらず、日々仕事する上で、業務オペレーションを考える上で大いに参考になる。

あと事例として印象に残ったのは、なぜビルの階段で一階から地下への階段だけが、切り離されて存在しているかというもの。火事の際、エレベーターではなく、階段で避難する人たちが、パニックのために一階で外へ出ずにそのまま地下まで降りてしまい、結局逃げ遅れることを避けるための「デザイン」だそうだ。書いてはなかったが、何回もそういう事故があったのだろう。地下だけではなくて、移動が意外と不便な階段にはもしかしたら、出口や連絡路と直結しているフロアで人を送り込むことを意図しているものがあるのかもしれないな、と観察眼が養われた。

本を通して、言われたら当たり前だけど、なかなか体系立って考えていないデザインの基本思想が繰り返し書かれていた。

  1. モデルの提示:道具やシステムはどうやって機能するのかモデルを提示するべし。例えば、空調で急激に部屋を暖めたり冷やしたりしたいときに、思い切り設定温度を高くしたり低くしたりする人がいるが、実は意味がない。一般的に空調は温度の調節するためには、気温の高いあるいは低い空気を送り出して、設定温度に達すると空気を止めるという設計になっているだけで、より高い・低い空気が送り出されるわけでも、風量を変更するわけでもないので、設定温度を高くしたり低くしても、希望の温度に達する時間は変わらない(風量調節は最近の空調にはあるので、そちらは有効)。これは、道具そのものを見てもどのように作動するのかが読み取れないから、人の頭の中に誤った「モデル」が形成されている事例だ。モデルがうまく提示されている道具の例には「ミシン」があげられていた。
  2. フィードバックの提示:モデルの提示と同様、人がその道具を使って起こした行為に対して、きちんと結果を提示する必要があるとのこと。確かに家電の多くは、こわれているのか、自分の操作ミスなのかわからない現象を起こすものが多い。うちの「勝手につくテレビ」なんて全く何が起きているのかわからない。わからないので、なんとか自分で説明しようとするのも人間の性で(うちの場合は、電気系統の接触が緩くなっているのだろうと思っている)、その(多分誤った)説明「モデル」のもとに、次の行為を起こすので、ますます泥沼。
  3. 制約:操作の制約を設けることでエラーの可能性をぐっと低めることができる。制約には物理的、文化的、論理的などのものがある。
  4. 操作性の提示:面は押すもの、棒は引っ張るもの、スロットは紙やコインを入れるもの、などのように、その部品がどういう操作をして動かすものかを明示することでエラーが減る。確かに押すのか引くのかわからないドアがある。
  5. 簡素化の努力:部品「コントロール」の数より機能が多いとエラーがおきやすい(デジタル時計、電話やコンピュータ)。一つの機能に一つのボタンというのはわかりやすい。が、コントロール(ボタンのような部品)の数が多いと人は「複雑」に思い、ストレスを覚える(リモコンなど)。一つの解決方法として、あまり使われないボタンを奥にしまっておく手がある(リモコンに見られる)。
  6. 標準化:できるだけ同じような操作は同じような機能を持たせたりすることで、人の記憶に依存することが軽減される。ただ、既存の標準を変更することは至難の業。時間や尺度の単位をこれから変更することは考えられないだろう。

見た目がシンプルだから使い方もシンプルとは限らない、ということだ。見ただけではなんのためのものかわからない単純なものは多いし(私が思いつくのはキッチン道具。しゃもじって日本人でなければわからないとか)。なんのためのものかわかったとしても使い方が難しいものも多い。スノーボードがいい例だ。確かに滑るためのものであるが、滑ると言っても色々な細かい操作が必要で、その操作をするのが道具ではなくて、使う人に依存しているので、「難しい」。

技術の使い方についても触れている。

  1. 使う人が記憶する作業を軽減(カレンダーソフトなど)
  2. 操作の自動化(車のスタートなど)
  3. 操作・道具の実質の変更(靴紐の代わりのマジックテープ。ただし、マジックテープは微妙な調整ができないので、スポーツ選手の靴はいまだに靴紐だそうだ)

著者は人間の脳がどのように情報を処理するかについても色々言及していた。(私はどうも脳の働きに興味があるようで、脳に関する一般人向けの本を先週2冊衝動買いしてしまった。)

  1. Short term memory (STM) は一度に5つ以上のことを覚えてはいられない。
  2. 人は論理よりは経験知によって判断する。似たような経験や情報は一緒に記憶され、例外だけが別納されるようで、例外事項に必要以上に重要性を感じる。(思い当たる節あり!)
  3. 人は自分がトラブルに遭遇すると環境のせいにし、他人のトラブルはその人の性格のせいにする一方で、自分の成功は自分の手柄とするのに、他人の成功はその人の環境に起因していると見る傾向がある(自己中心的だ!)。ただし、日常的に使う道具に関してはトラブルを自分のせいとする傾向がある。

コメント / トラックバック2件 to "The Design of Everyday Things 「記事 :好きな色 アメリカ人 vs 日本人」続編(長文)"

こんにちわ。書き込みしていただいたShinです。大変興味深く読ませていただきました。僕の住む医療の世界でも、個人の医療ミスを隠さないで、予防につなげていく対策を行っています。そのためには個人に対する制裁は最小限にしないと隠蔽する体質が生まれ新たなる事故を生むとされています。また医療製品が間違いなくできていても、人間の感性に会わない構造や妙名は間違いを生みやすいようです。

Shin-san わざわざコメントありがとうございます!「人間の感性」にあわないといけない、という点は The Design of Everyday Things の著者Donald Norman はその後さらに訴求しているようで、「エモーショナルデザイン」なるものを提唱しているようです(まだそのあたり読んでいませんが)。その理論の原点にもなっているのがこの本だったようで。

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